平成21年5月1日
尼崎市長 白井 文 殿


               市営住宅ペット飼育禁止条例についての要望書


日々のご公務、ご多忙の御事と拝察いたします。

さて、私達は人と動物とのより良い関係を目指し、町づくりの観点から各社会福祉協議会や
動物愛護センターの協力を得て、ノラ猫問題などの問題に取り組んでおります在市諸団体です。

この度の「市営住宅におけるペット飼育禁止条例」に向けた措置により、入居者のみならず
近隣住民にとっても深刻な事態が起こっています。
このままでは、大きな社会的問題に発展するとの危惧の念から、下記の要望を提出させていただきます。

ご賢察の上、早急に措置の是正を賜りますようお願い申し上げます。




1) 「ペットを手放さなければ、住宅を退去させる」

「ペットを手放すか、住宅を退去するか」と、期限付きの二者択一を迫られた入居者においては、
ペットの譲渡先を、動物病院、動物愛護団体、インターネット、情報誌等々に求め、
複数の団体から高額な費用(引き取り料として30万円〜150万円)を要求されるような状況に
陥り、また、処分も退去もできない者は、意に反して、ペットを公園等に捨てるという行為に
及んでおります。

ペットを遺棄する行為は、言うまでも無く犯罪(罰則、50万円以下の罰金)ですが、
住宅管理課がペット飼育者に対し徴求している「是正誓約書」には、
「現在飼育しているペットについて、里親を探すなど団地外に移す努力を行い、違反した場合は、
減免の取り消し、明け渡し請求などのいかなる処分も受諾します。」と明記されており、
入居者を犯罪行為に追いやる結果を招いています。

捨てられた多数のペットは野生化し、周辺の生活環境を著しく悪化させる事は明らかです。
直接市営住宅のペット問題に関係のない市民にまで被害を及ぼす事は、市民感情からも
納得できかねます。事態が更に深刻化する前に、一刻も早い措置の是正をお願いいたします。


2) 「市営住宅におけるペット禁止条例案」の見直しを求めます。

大阪市は、平成8年度の条例改正の際、条例でペット飼育のみを一律に禁止する事は
困難とし、平成17年、大阪府は、「動物飼育自体を禁止する法令等の根拠は存在しない」
「飼育者への制裁や飼育を強制的に制限する事は困難である」とし、府下全域の府営住宅、
公社住宅において、一定条件でのペット飼育が解禁されました。
「大阪がよくて、なぜ尼崎は全面禁止か」その根拠に乏しく、再考の必要があると考えます。

政府は、「集合住宅での家庭動物飼養のガイドライン策定」を正式に打ち出し
(平成18年10月31日環境省告示第140号)、もはや集合住宅での動物飼育は、
法的にも社会的にも、一般的な通常の生活として認知されています。
こうした世の中の流れに大きく逆行する「ペット飼育禁止条例」を制定する事で、
問題解決が図れるとするお考えは、あまりに短絡的です。

住宅管理課においては、里親探しのHPを立ち上げ、ペットの譲渡を支援する計画の
ようですが、現在、市営住宅で申告されているペット飼育頭数は600頭以上、
その2倍から3倍の飼育数が推測されます。

尼崎市動物愛護センターにおける平成20年度の犬ねこの譲渡実績は、
犬14頭、猫0頭、持ち込まれた犬ねこの98%以上が殺処分されており、
これが里親探しの現実です。
数十頭の話しならいざ知らず、この計画の見通しの甘さは否めません。
 
市営住宅は、公営住宅法等に基づき、住宅困窮者に対し、低廉な家賃で
住宅を供給する目的で、国と市が建設した市民共有の公共財産です。
民間の賃貸住宅とは成立根拠が大いに異なり、法的にも公共の福祉に反しない限り、
入居者の権利は尊重されなければなりません。

管理条例で定められた措置については、当該条項を根拠に、明け渡し請求を求めることは
可能ですが、入居者が動物を飼育したというだけで、事業主体が直ちに契約を解除し、
住宅の明け渡し請求できなるものではありません。
事実、全国の自治体において、ペット飼育のみを理由に提訴に踏み切った事例は存在しません。

今後の展開として、定めた退去期限が過ぎても、ペットをどうする事もできない入居者に対する
明渡請求、明渡請求訴訟、強制執行については、どのようにお考えでしょうか。
基準、期日等、具体的なプランをお教えください。

また、「ペットを手放すか、退去するか」と通告され、住居を引換えにできない入居者は、
既にペットを殺処分したり遺棄するなどの行為に及んでいますが、その事から考えましても、
条例制定後は、速やかにすべてのペット飼育者に対する提訴の手続きを開始しなければ、
極めて不平等と考えますが、市のご見解をお示しください。


3)「市営住宅におけるペット問題プロジェクトチーム」の設置を求めます。

長年、市営住宅におけるペット飼育は、事実上、暗黙の了解と言える状況が続いてきました。
そのルール無き黙認が、無秩序なペット飼育者を助長させてしまいました。

私達の多くは、民間のペット可集合住宅に暮らし、一定のルールのもと、ペットとの共生が
成立しています。
ペット対応仕様住宅でもなく、動物嫌い、アレルギーの入居者もいます。
何ら条件の変わらない市営住宅でだけ、なぜこれほどペット問題が起るのか全く理解できません。
唯一の違いは、市営住宅にはペット飼育のルールが存在しないという事です。

「一切の苦情を受け付けない事を条件に、自治会の合意があればペット飼育を認める」との
方針を伺っておりますが、先にも申しましたとおり、ルール無き黙認は、問題が深刻化するだけで
入居者の健全な生活は望めません。

問題となっているごく少数の「継続的な迷惑行為」に該当するペット飼育者への法的措置は
やむを得ないでしょうが、一時しのぎの条例では、全体の根本的な解決はできません。

市営住宅のペット飼育問題は、長年、行政で解決できなかった課題のひとつではないでしょうか。
そうであるならば、問題解決の糸口を「新しい公共」である住民自治力に求める事を提案いたします。

つきましては、将来を見越した十分な審議と合意形成を図るため、自治会、獣医師、弁護士、
ボランティア団体等による、「市営住宅におけるペット問題プロジェクトチーム」の設置をしてい
ただけますようお願いいたします。

尚、ご多忙のところ誠に恐縮ですが、各項目について文書での回答を頂きたく、
重ねてお願い申し上げます。

                                                          以上







TOP







inserted by FC2 system